【毎年の手続】ここだけは押さえておきたい、保険のあれこれを解説します!

事業を始めてからも必要な手続きはいくつかあります。その中でも、今回は「保険」に関する手続きをご紹介。「労働保険の年度更新」と「社会保険の定時決定」について、概要や手続きの流れなどを解説していきます。

※税金に関する毎年の手続きについて知りたい方はこちらをご覧ください!

目次

労働保険の年度更新

労働保険の年度更新

「労働保険の年度更新」とは、その年度の見込み給与をもとに、労働保険料を算定して前払いする手続きのこと。労働保険(雇用保険と労災保険の総称)の支払いをしているすべての事業者が毎年行う手続きです。

年度更新の申告・納付期限

年度更新の申告および納付期間は、毎年6月1日から7月10日です(社会情勢によって期間延長をすることもあり)。期間を過ぎてからの手続きになると、政府が労働保険料・拠出金の額を決定してしまいます。さらに納付すべき保険料と拠出金の10%の追徴金が課されることもあるので、期限はしっかりと守るようにしましょう。

年度更新方法の流れ

年度更新方法の流れは以下の通りです。

①申告納付書を確認

②賃金集計表を作成する

③申告書を作成する

④申告書の提出

⑤保険料の納付

申告納付書の用紙は、毎年5月末ごろまでに送られてきます。用紙が届いたら、まず印刷されている会社名などの情報に誤りがないかどうかを確認しましょう。確認が終わったら賃金集計表をもとに、申告書の作成を行います。申告書を提出したら、賃金集計表をもとに計算した4月から翌年3月の1年間に必要な労働保険料を前払いで納付します。

保険料の計算対象者

労働保険とは、雇用保険と労災保険の総称です。年次更新時には、2つの保険料をまとめて計算するので、それぞれの計算対象者を確認しておきましょう。

<労災保険の計算対象者>

正社員やパート、アルバイト、日雇いなどの雇用形態にかかわらず、労働の対価として賃金を支払っているすべての労働者が対象

<雇用保険の計算対象者>

正社員やパート、アルバイト、日雇いなどの雇用形態にかかわらず、「1週間の所定労働時間が20時間以上」「31日以上の雇用見込みがある場合」の労働者が対象

※4月1日現在で64歳以上の高齢者は、雇用保険の保険料が免除されるので注意が必要

納付する保険料の計算方法

納付する労働保険料の計算方法は、以下の通りです。

・労災保険料:労災保険対象従業員の賃金総額×労災保険料率

・雇用保険料:雇用保険対象従業員の賃金総額×雇用保険料率

上記をそれぞれ計算し、合算した金額が年次更新時に納付する労働保険料です。なお、労災保険料率や雇用保険料率は、業種や年度によって変わります。計算するときは、最新の保険料率をご確認ください。

参考:厚生労働省「令和3年度の労災保険率について」

参考:厚生労働省「雇用保険料率について」

申告・納付方法

年次更新の申告書提出・納付方法は、以下の通りです。

・金融機関へ申告書を提出・納付

・管轄の都道府県労働局または労働基準監督署へ申告書を提出・納付

・郵送

・e-Gov(イーガブ)を利用した電子申請

上記のうち、管轄の都道府県労働局宛てに申告書と添付書類を送る「郵送」は、別途金融機関などで保険料を納付する必要があります。また、e-Gov(イーガブ)を利用した電子申請は申告・納付が可能ですが、事前に電子申請を行うための手続きが必要です。

参考:厚生労働省

社会保険の定時決定

社会保険の定時決定

定時決定とは、毎年1回行われる社会保険の標準報酬月額の見直しのことをいいます。標準報酬月額とは、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料を算定するときのもとになる額のこと。給与は昇進や昇格など年によって変動があるため、毎年4月から6月に支払われた報酬をもとに算出し、算定基礎届を提出することによって、その年の9月から翌年8月までに適用される標準報酬月額を決定しています。

算定基礎届の提出時期

算定基礎届の提出時期は、毎年7月1日〜10日(休日の場合は翌日)までです。毎年6月ごろに書類が届くので、7月までに準備しておくと安心です。なお、社会情勢によって期間延長をすることもあるので、「算定基礎届 提出期限」などのワードで検索して最新の情報を確認しておきましょう。

参考:日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」

定時決定の流れ

6月初旬から中旬ごろになると、年金事務所から算定基礎届が送られてきます。書類が届いたら、定時決定に必要な書類の準備などを始めておきましょう。定時決定の流れは以下の通りです。

①支払給与額などの確認

②算定基礎届・算定基礎届総括表の作成

③届出書の提出

④標準報酬月額の決定

社会保険は支給月をもとに届出を行うため、実際に支払われた月の賃金台帳で支払給与額を確認します。その後、4月から6月までの3ヶ月間に受けた報酬の総額と平均額を参考に、新しい標準報酬月額を算出し、書類に記入。届出書を提出すると、年金事務所から「標準報酬月額決定通知書」が届くので、9月からはその通知書に書かれている保険料を適用します。

算定基礎届の対象者

算定基礎届の提出の対象者は、7月1日現在の健康保険・厚生年金保険の被保険者となっている従業員と、70歳以上の従業員です。休職中や育児休業中の従業員も含まれるので、忘れないように気をつけましょう。

ただし、以下のいずれかに当てはまる場合は算定基礎届の提出が不要です。

・6月1日以降に被保険者になった従業員

・6月30日までに退職した従業員

・7月改定の月額変更届を提出する従業員

・8月または9月に随時改定が予定されている従業員

どの従業員が対象になるかは、事前にしっかりと確認しておきましょう。

標準報酬月額の計算方法

毎月の健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料を計算するために、「標準報酬月額」を算出する必要があります。この標準報酬月額は、4月から6月までの3ヶ月間(いずれも支払基礎日数17日以上)に受けた報酬の総額を、その期間の総月数(3ヶ月だから「3」ということ)で割って計算。その後、「標準報酬月額保険料表」と照らし合わせて被保険者の社会保険料が決定します。

なお、3ヶ月間の報酬に「年3回以下の賞与」や「交際費」「慶弔見舞金」などは含まれません。

算定基礎届の提出方法

算定基礎届の提出先は、事務センターか管轄の年金事務所です。書類の提出方法は以下の通り。

・窓口へ提出

・郵送(算定基礎届送付時に同封されている返信用封筒を利用)

・電子媒体(データをCDまたはDVDに保存して提出)

・e-Gov(イーガブ)を利用した電子申請

・gBiz(ジービズ)を利用した電子申請

上記のうち、「電子媒体」により提出する場合は、日本年金機構のホームページから「届書作成プログラム」のダウンロードが必要。また、e-Gov(イーガブ)を利用した電子申請は、事前に電子申請を行うための手続きが必要です。

まとめ

従業員を雇っている事業者にとって、労働保険の年度更新や社会保険の定時決定は毎年欠かせない手続きです。期限を過ぎてしまうと、追徴金を支払わなければならない可能性もあるため、手続きをするときはスケジュールに余裕をもって準備をしておきましょう。

なお当事務所では、労働保険の年度更新や社会保険の定時決定についてのご相談も承っています。ご不明な点があれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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